はじめに:つい“嘘”をついてしまう理由

転職活動は、自分自身を「売り込む」場面の連続です。とくに20代〜30代前半の若手の方にとっては、「経験が浅い」「実績が少ない」といった自覚があるため、少しでもよく見せたいという気持ちから、つい“事実とは異なること”を伝えてしまうケースがあります。
■ 転職活動における不安と見栄
例えば、
- 「このままじゃ書類選考すら通らないのではないか」
- 「同期はみんなもっとすごい会社に転職している」
- 「希望する企業のレベルに、今の自分では届かないかも」
といった焦りや不安を感じたことはありませんか?
そんな不安に後押しされて、ほんの少しだけ経歴を“盛って”しまったり、本当はあまり関心のない職種を「ずっとやりたかった仕事」と言ってしまう…。これは珍しいことではなく、多くの若手転職者が一度は通る道でもあります。
■ 若手によくある“嘘”のパターン
とくに以下のようなケースは、若手の転職希望者によく見られます。
- 経歴の“盛り”
→ 参加していただけのプロジェクトを「主導した」と言う
→ 業務の一部を「一人で担当していた」と脚色する - 志望動機の“演出”
→ 「御社の理念に共感して…」と言いながら、実は福利厚生目当て
→ 本音ではキャリアに迷っているが、明確なビジョンがあるように見せる
このような嘘は、本人に悪気があるわけではないことがほとんどです。むしろ「自分をよく見せたい」という一種の防衛反応とも言えるでしょう。
しかし、その“少しの嘘”が思わぬトラブルにつながる可能性があるのです。次章では、転職エージェントがどこまでその嘘を見抜いているのかについて掘り下げていきます。
転職エージェントはどこまで見抜いている?

「ちょっとくらい経歴を盛ってもバレないだろう」
「志望動機をキレイに整えておけば問題ないはず」
そう思ってしまいがちですが、実際には転職エージェントは驚くほど多くの情報を見抜いています。
特に若手の転職希望者にとって、「エージェントはどこまで見ているのか?」を理解しておくことは非常に重要です。
■ 情報収集力と“プロの目線”
転職エージェントは、日々多くの求職者と接し、企業とのマッチングを行っています。中には年間数百人単位で担当するエージェントも少なくありません。その経験値の蓄積により、「よくある嘘」や「矛盾点」にはすぐに気づきます。
さらに、エージェントは企業側とも深く連携しており、
- どんなスキルを求めているか
- どのような性格・志向の人材が活躍しているか
- 過去にどんな経歴の人が採用されてきたか
といった“生の採用情報”を持っています。つまり、履歴書や話の内容が企業の求める人材像とずれているかどうか、すぐに見抜かれる可能性があるのです。
■ 面談・履歴書・職務経歴書の「ズレ」からわかること
エージェントは、提出された書類だけでなく、面談中の会話・態度・エピソードの深掘りを通じて、以下のような「違和感」をチェックしています。
- 書類と口頭の内容にズレがないか
例:職務経歴書に「リーダーとして業務を主導」とあるが、面談で深掘りすると他の社員のサポートだったことが判明 - 実績に具体性があるか
例:「売上拡大に貢献」と書かれているが、具体的な数値や行動が語られない - 話の一貫性・論理性
例:志望動機として「社会貢献がしたい」と言いながら、希望条件は「年収重視」
これらのズレは、一見些細に思えるかもしれませんが、信頼性に直結する重大なサインと受け取られます。
■ 「隠し事」は協力体制の妨げになる
エージェントは、求職者に代わって企業へ推薦文を作成したり、条件交渉を行ったりする「パートナー」です。
そのため、正確な情報が伝わらないと、適切なマッチングができず、結果的に自分のチャンスを狭めることにもなります。
特に若手の場合、「経験が浅いのは仕方ない」と理解してくれる企業も多いもの。大切なのは、“実力以上に見せること”よりも、“正直な自分をどう魅せるか”です。
次章では、嘘がバレた場合に起きる具体的なリスクについて解説していきます。
嘘がバレるとどうなる?リスクと代償

「少しくらい話を盛っても、大丈夫だろう」
そう思って伝えた“嘘”や“ごまかし”が、エージェントにバレたとき——
その代償は、想像以上に大きなものになる可能性があります。
ここでは、若手転職者が知っておくべき、嘘がバレた際の現実的なリスクについて解説します。
■ エージェントとの信頼関係が崩れる
転職エージェントは、求職者のキャリアや希望条件を正しく把握し、企業に対して“推薦”という形で紹介を行います。
その際に、求職者から受け取った情報が虚偽だった場合、「この人は信用できない」と判断され、サポートの優先順位を下げられることがあります。
一度信頼を失うと、たとえその後に正直に話したとしても、「また何か隠しているのでは?」と疑われてしまうことも。
特に若手の場合、「将来性があるか」「育成の余地があるか」といった“ポテンシャル採用”が重視されるため、誠実さや素直さが評価ポイントになることを忘れてはいけません。
■ 企業への推薦が取り下げられるケースも
エージェントが企業に紹介した後で、履歴や職務内容に不一致が見つかった場合、
エージェントの判断で「推薦を取り下げる」という措置が取られることもあります。
たとえば、
- 職務経歴書の内容が過度に誇張されていた
- 実績やスキルの裏付けが取れなかった
- 志望動機が明らかに企業とマッチしていなかった
といった場合、企業側に「誤解を与える推薦をしてしまった」として、信頼関係を守るためにエージェントが推薦を撤回するのです。
これは求職者だけでなく、エージェント自身の信用にも関わる問題だからです。
■ 最悪の場合、内定取り消しも
さらに深刻なケースでは、嘘が原因で内定が取り消されることもあり得ます。
企業が採用を決定した後に、以下のような事実が判明した場合が該当します:
- 学歴や職歴の“経歴詐称”
- 資格取得歴の虚偽申告
- 面接での発言と職務実態との乖離
これらは企業にとって重大な判断材料であるため、「信頼できない人物」とみなされれば、法的には内定取消しが認められる可能性もあるのです。
若手の転職では、「まだ経験が浅い」こと自体は大きな問題ではありませんが、“信頼を損なう行為”は大きなマイナスとして残ります。
■ 嘘のリスクは思っている以上に重い
転職活動において、「少しの嘘」で得られるメリットは一時的です。しかし、それが発覚したときに失うものは、
- 信頼
- チャンス
- 将来の可能性
など、大きな代償を伴います。
次章では、若手がやってしまいがちな「バレやすい嘘」の具体例について解説していきます。
若手がやってしまいがちな“バレやすい嘘”とは?

若手の転職希望者がつい口にしてしまう「嘘」には、ある程度のパターンがあります。
その多くは「良く見られたい」「足りない部分を補いたい」という前向きな気持ちからくるものですが、エージェントや企業の目には“虚偽”と映り、信頼を損なう原因になることも。
ここでは、特に若手がやりがちな「バレやすい嘘」の代表例を紹介します。
■ 1. 実務経験の水増し
もっとも多いのが、業務経験やスキルを“実際よりも多く話す”パターンです。
例:
- 「プロジェクトのリーダーを任されていた」と言ったが、実際にはメンバーの一員に過ぎなかった
- 「〇〇の設計経験があります」と書いたが、実際は上司の補助をしていただけ
このような水増しは、面談で掘り下げられるとすぐにボロが出ます。
特にエージェントや企業の担当者は「その経験をどうやって身につけたのか」「具体的にどんな成果を出したのか」などを丁寧に聞いてきます。
“実際にやった人”しか答えられない質問に答えられない時点で、信頼は一気に崩れます。
■ 2. 離職理由の偽装
退職・転職の理由も、つい本音を隠してしまいやすいポイントです。
例:
- 「キャリアアップを目指して退職」と言ったが、実際は人間関係や業務のストレスが原因だった
- 「会社の方向性と合わなかった」と説明したが、本当は勤務態度や成果に問題があった
もちろん、伝え方を工夫するのは悪いことではありません。
ただし、「本音が全く見えない」「理由が表面的すぎる」と判断されると、“逃げの転職”と見なされてしまいます。
エージェントは企業に推薦する際、「この人は転職理由が明確で、次の環境で活躍できるか」を非常に重視します。
そのため、離職理由に一貫性や説得力がないと、推薦を見送られるケースもあります。
■ 3. 希望年収や条件の過剰申告
もうひとつありがちなのが、希望条件の“盛りすぎ”です。
例:
- 現年収が350万円なのに、希望年収を500万円と伝える
- 実績がまだ乏しいのに「裁量権のあるポジションを希望」と言う
- 未経験の業種にもかかわらず、「年収・残業・福利厚生すべて妥協したくない」と主張する
エージェントは、市場相場や企業の条件を熟知しています。
そのため、「この希望条件は妥当かどうか」はすぐに判断されます。
根拠のない希望条件は、ただの“わがまま”に見え、企業とのマッチングの妨げにもなります。
■ 嘘より“正直ベース”での工夫を
経験が浅いからといって、無理に背伸びする必要はありません。
転職エージェントは、あなたの“弱点を隠す存在”ではなく、“弱点を補って、魅力として伝えるプロ”です。
次章では、正直に伝えるべき情報と、伝え方を工夫すべきポイントについてご紹介します。
正直に伝えるべきこと、言い方を工夫すべきこと

若手で転職を考えるとき、「不利になることは隠したい」「マイナスに見られたくない」という気持ちになるのは自然なことです。しかし、だからといって事実を歪めてしまうと、前章でお伝えしたように信頼を損ね、かえって損をしてしまうリスクがあります。
重要なのは、“すべてを包み隠さずさらけ出す”ことではなく、正直さを保ちつつ、伝え方を工夫することです。
■ マイナス情報の伝え方テクニック
たとえば、「短期間での離職」「成果が出なかった業務」「人間関係での退職」など、いわゆる“マイナスに見える事実”がある場合でも、次のように伝え方を変えることで、受け取られ方は大きく変わります。
例1:短期離職の場合
✕:「仕事が合わなくてすぐ辞めました」
〇:「入社後に業務内容が想定と異なり、自分の強みが発揮できないと感じました。今後は〇〇のような環境で長く貢献したいと考えています」
例2:結果を出せなかった経験
✕:「売上を上げられませんでした」
〇:「目標には届きませんでしたが、顧客からの信頼を得る営業スタイルを築けたことは自信につながりました」
ポイントは、“過去の事実”を冷静に受け止め、その経験から何を学び、今後にどう活かしたいか”をセットで伝えることです。これにより、ただのマイナスではなく、「成長できる人材」として見られる可能性が高くなります。
■ 「伝え方のプロ」=エージェントを味方につけよう
転職エージェントは、あなたの代わりに企業へ推薦文を作成し、条件交渉まで行ってくれる“伝え方のプロ”です。
だからこそ、正直に情報を共有することが、最終的には最大の武器になります。
たとえば、
- 自分ではマイナスだと思っていた経験が、実は他社では高評価につながる
- 面接での伝え方や表現方法について、具体的なアドバイスを受けられる
- 志望動機の整理やブラッシュアップを手伝ってもらえる
といったメリットがあります。
エージェントにすべてを話すのは少し勇気がいりますが、“本音で向き合ってくれる求職者”は、エージェントからも信頼され、より丁寧にサポートされる傾向にあります。
■ 弱みは「伸びしろ」にもなる
経験が浅い、実績が乏しい、キャリアに自信がない——
そうした“弱み”も、見方を変えれば「伸びしろ」として受け止められることがあります。
エージェントと二人三脚で進めることで、自分一人では見えなかった「強み」や「価値」に気づけることも多いのです。
次章では、エージェントとの信頼関係を築きながら、若手が“信頼される転職者”として評価されるコツをご紹介します。
エージェントをうまく使うコツ:信頼される転職者になるには?

転職エージェントは、求人を紹介してくれる“サービス提供者”であると同時に、あなたのキャリア形成をサポートする“パートナー”でもあります。
その関係性を活かすかどうかは、求職者側の「接し方」次第です。とくに若手の場合、実績やスキルで勝負するのが難しい分、“信頼される転職者”としての振る舞いが非常に重要になります。
ここでは、エージェントと良好な関係を築き、転職成功率を高めるためのコツをご紹介します。
■ 本音で話せる関係性の作り方
1. 隠さない・取り繕わない
「エージェントに良く思われたい」と思って、本音を隠してしまう方も少なくありません。しかし、“取り繕った自分”を見せてしまうと、ミスマッチな企業を紹介される原因になります。
たとえば…
- 興味のない業種に「やってみたいです」と言ってしまう
- 不安なことがあるのに「大丈夫です」と強がってしまう
こうした“嘘ではないけれど、本音でもない”発言は、結果的に自分を苦しめることに。
まずはエージェントに対して、「正直に話しても大丈夫」という信頼感を持つことが第一歩です。
2. 質問や相談を遠慮しない
わからないこと、不安なことがあれば積極的に質問しましょう。エージェントは転職市場や企業情報に詳しい専門家です。
「何も聞かずに黙っている人」より、「前向きに相談してくれる人」の方が信頼されやすいのです。
■ 若手でも「信頼される転職者」になるためのポイント
1. レスポンスの速さ・丁寧さを意識する
エージェントにとって、連絡がスムーズな求職者は紹介しやすく、信頼もしやすい存在です。
メールや電話の返信が早く、やり取りが丁寧な人は、それだけで「社会人としての基本ができている」と好印象を与えます。
2. 面談や書類提出の準備をしっかり行う
履歴書や職務経歴書に抜けや誤字が多かったり、面談で「何も準備していません」となると、エージェントは「この人に企業を紹介しても大丈夫かな?」と不安になります。
逆に、準備の姿勢を見せるだけで「本気度」が伝わり、信頼につながります。
3. フィードバックを素直に受け取る
エージェントは、企業の反応や選考通過の可否について、率直なフィードバックをくれます。
厳しい意見をもらうこともあるかもしれませんが、それを素直に受け止めて改善する姿勢がある人は、成長力のある転職者として評価されます。
■ 良い関係が、良い転職につながる
転職活動は、エージェントとの二人三脚で進むもの。
エージェントから信頼されることで、
- 自分に合った求人を優先的に紹介してもらえる
- 応募書類や面接対策の質が上がる
- 条件交渉で強いサポートが受けられる
といった、多くのメリットを享受できます。
若手だからこそ、誠実な姿勢と成長意欲を見せることで“信頼される転職者”になるチャンスは十分にあります。
次章では、本記事のまとめとして、嘘に頼らず、誠実な転職活動を成功させるための考え方をお伝えします。
まとめ:嘘より“誠実な戦略”で成功する転職を

転職活動において、少しでも自分を良く見せたいという気持ちは、多くの若手が抱える自然な感情です。
とくに20代〜30代前半の方にとっては、「実績が足りない」「経験に自信がない」という焦りから、経歴を“盛って”しまったり、志望動機を取り繕ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、転職活動のパートナーである転職エージェントは、数多くの求職者と向き合ってきた“プロ”。
たとえ些細な嘘であっても、情報の矛盾や違和感を見抜かれる可能性は非常に高く、それが原因で信頼を損ねてしまえば、せっかくのチャンスを自ら遠ざける結果になりかねません。
■ 嘘の“短期的メリット”より、誠実な“長期的信頼”を
経歴やスキルに自信がなくても、「正直に話すこと」「伝え方を工夫すること」で、マイナスをプラスに変えることは十分に可能です。
エージェントは、あなたの“欠点を隠す存在”ではなく、“魅力を最大化する存在”。
だからこそ、正直な情報提供と、誠実な姿勢がもっとも大きな武器になります。
■ 若手だからこそ伸びしろを活かせる
若手の転職では、「完成された人材」よりも、「伸びしろのある誠実な人材」が好まれる傾向にあります。
経験や実績よりも、
- 素直さ
- 向上心
- コミュニケーション力
といった“人柄”が評価される場面も多いのです。
そのためには、エージェントとしっかり向き合い、信頼関係を築くことが不可欠。
本音で会話し、アドバイスを素直に受け入れる姿勢が、やがて大きな信頼となり、あなたの可能性を広げてくれます。
■ 最後に
「転職エージェントに嘘をついたらバレますか?」という疑問の答えは、
「多くの場合バレる。そして、信頼を失うリスクがある」です。
だからこそ、遠回りに見えても、“誠実な戦略”で臨むことが、最終的にはもっとも近道になります。
あなたのキャリアは、まだまだこれからです。
信頼を積み重ね、自分らしい転職を成功させるために、今日から“正直で賢い転職活動”をはじめてみましょう。