はじめに:転職エージェントとのトラブルって本当にあるの?

「転職エージェントって無料で使えるし、プロに相談できるから安心」と思っていませんか?
たしかに、転職エージェントはキャリア相談や求人紹介、面接対策までサポートしてくれる心強い存在です。しかし、実際には「エージェントとのトラブルに巻き込まれた」という声も少なくありません。
■ 実際にあったトラブル事例
以下の事例はフィクションですが、実際にありうるケースです。
● 事例①:聞いていた仕事内容とまったく違う部署に配属
20代後半のAさんは、エージェントから「裁量のあるWebマーケティング職」と紹介された企業に転職。しかし、実際に入社してみると配属先は営業部。業務内容も顧客対応が中心で、希望していたキャリアと大きく異なっていたといいます。
● 事例②:内定が決まっていたのに企業側の都合で取り消しに
30歳のBさんは、希望していた企業から内定をもらい、現職に退職願を提出。しかし入社直前になって「採用計画が変わった」と内定を取り消されてしまいました。エージェントからは「運が悪かったですね」と軽くあしらわれ、泣き寝入りに。
● 事例③:虚偽の情報で入社を急かされた
「働きやすい職場ですよ」「残業はほとんどありません」とエージェントに紹介されて入社を決めたCさん(20代前半)。ところが実際は慢性的な長時間残業が常態化しており、早期退職を余儀なくされました。
■ なぜ若手ほどトラブルに巻き込まれやすいのか?
若手求職者がトラブルに遭いやすい背景には、いくつかの理由があります。
- 転職経験が少なく、情報を鵜呑みにしやすい
- 「早く内定がほしい」という焦りから判断が甘くなりやすい
- エージェント側も「決まりやすい層」として営業的に優先しがち
また、エージェントも企業からの紹介手数料で運営しているため、時には「無理にでも決めたい」という意図が働くことも。結果として、丁寧なサポートよりも“売上重視”の対応をされるケースがあるのです。
損害賠償ってどういうケースで発生するの?

転職エージェントとのやり取りのなかで「これって損害賠償できるのでは…?」と思うような出来事に遭遇したことはありませんか?
実際に、法的にエージェント側の責任が問われるケースもあります。とはいえ、損害賠償が成立するには一定の条件や根拠が必要です。この章では、どんな場面でエージェントの過失が認められやすいのか、代表的な例と共にご紹介します。
■ エージェントの過失が問われる主なケース
① 誤情報による転職
最も多いトラブルのひとつが、事実と異なる求人情報によって転職を決めてしまうケースです。
例えば、
- 「残業ほとんどなし」と聞いていたが、実際は月80時間超
- 「年収は最低でも500万円」と言われたが、提示年収は450万円
- 「正社員採用」と聞いていたのに、契約社員だった
このような誤情報に基づいて意思決定をし、結果的に損害(収入減・退職・生活の混乱など)を被った場合、エージェントの説明責任が問われる可能性があります。
② 労働条件の秘匿・不開示
企業側から聞いていた重要な労働条件(勤務地、勤務時間、業務内容など)をエージェントが意図的に伝えなかった場合、それが求職者にとって重大な不利益であれば、損害賠償の対象になることも。
特に、転職によってライフスタイルに大きな影響が出る若手世代にとっては、「聞いていれば応募しなかった」ような情報を隠されたケースは深刻です。
③ 内定辞退の強要・圧力
まれにですが、エージェントが「この企業のほうがあなたに合っている」と別企業の内定を辞退させたり、「辞退すると今後紹介できない」といった圧力をかけるケースもあります。
もしこれによってキャリアに損害が出た場合、業務上の過失や不法行為にあたる可能性が出てきます。
■ 法的に損害賠償を請求できるまでの流れ(簡易版)
実際に損害賠償を請求するとなると、以下のような流れになります:
- 証拠の確保
メール・LINE・通話録音・面談メモなど、エージェントの発言を裏付ける記録を残しておくことが重要です。 - まずはエージェント側に事実確認・相談
トラブルの事実を伝え、誠意ある対応が取られるか確認します。 - 第三者機関に相談
対応が不十分な場合、労働局や職業紹介事業を監督する行政(厚生労働省・労働局)への相談も視野に。 - 損害額が明確で深刻な場合は法的手段も
最終的には弁護士に相談し、民事訴訟や交渉によって損害賠償を請求することになります。
■ 注意:損害賠償が認められるハードルは高め
ただし、現実には「損害を受けた」と感じていても、法的に過失や損害が立証できないケースも多くあります。そのため、大切なのは「問題が起こる前に回避する」こと。
よくある誤解と注意点

転職エージェントとのトラブルに遭遇したとき、多くの人がまず思うのが「これってエージェントに責任を取ってもらえるのでは?」という疑問です。
しかし、現実はそう簡単ではありません。この章では、若手の求職者が特に勘違いしやすいポイントを整理し、損害賠償を本気で考える前に確認すべきことを解説します。
■ 「失敗したらエージェントに責任を問える」は本当か?
結論から言うと、必ずしも責任を問えるとは限りません。
多くの求職者が、「エージェントにすすめられた企業なんだから、失敗したらエージェントの責任」と感じがちですが、法的にはそう単純ではありません。
エージェントは「紹介業者」であって、求職者の代理人や保証人ではないという立場です。つまり、紹介内容が“重大な虚偽”や“重要事項の隠蔽”でない限り、「合わなかった」「思っていたのと違った」といった結果だけでは損害賠償の根拠にはなりにくいのです。
■ 利用規約の落とし穴
転職エージェントを利用する際、多くの人がスルーしがちなのが「利用規約」です。しかし、この中には重要な責任の範囲や制限が明記されていることがほとんどです。
例えば、以下のような文言があるケースも珍しくありません:
- 「当社は求人情報の正確性・完全性を保証するものではありません」
- 「当社の紹介により発生した損害については一切の責任を負いません」
- 「紹介サービスは自己責任で利用するものとします」
このような条項がある場合、万が一トラブルが起きても、エージェント側が法的責任を免れる根拠となることがあります。
つまり、損害賠償を主張する際に“契約書上すでに免責されていた”ということもあり得るのです。
■ 損害賠償を求める前に確認すべき3つのこと
実際に「損害賠償を請求したい」と考えたときは、まず以下の3点を冷静に整理しましょう。
① 言った・聞いたの証拠が残っているか?
口頭だけの説明では立証が困難です。メール、LINE、録音、書面などがあるかどうかが非常に重要です。
② 「重大な過失」または「違法行為」と言えるか?
単なる「認識のズレ」や「相性の問題」ではなく、法的に「不法行為」や「契約違反」に該当するかがポイントです。
③ 自分にも判断ミスや同意がなかったか?
エージェントの話を鵜呑みにしたり、十分な確認をせずに転職を決めてしまった場合、自身の責任も問われることがあります。
■ 冷静な判断がトラブルを防ぐ
転職活動は、人生に関わる大事な決断です。だからこそ、エージェントを頼る際には「全部お任せ」ではなく、「自分の責任で判断する」という意識が重要です。
トラブルを防ぐためにできること

転職エージェントとのトラブルを完全に防ぐことは難しくても、「巻き込まれにくくする」ことは可能です。
ここでは、信頼できるエージェントを見分ける方法から、面談時・書面確認時に意識しておくべきポイントを紹介します。少しの注意が、後悔のない転職につながります。
■ 信頼できるエージェントの見極め方
エージェント選びで最も重要なのは、「求人の数」ではなく、「対応の質」です。以下のような特徴を持つ担当者は、信頼できる可能性が高いと言えます。
✅ 求職者の希望を丁寧にヒアリングしてくれる
→ ノルマ重視の営業型エージェントは、一方的に求人を押し付けてくる傾向があります。
✅ 求人のメリットだけでなく、リスクや懸念点も説明する
→ 「いいことしか言わない」担当者は、情報を選別している可能性があります。
✅ 応募や入社を急かさない
→ 「この求人、今日中に返事ください」など、急かす発言が多い場合は注意が必要です。
✅ 企業の内情や離職率など、裏側の情報も共有してくれる
→ 信頼関係があれば、企業に直接聞けないリアルな情報も教えてくれます。
複数のエージェントに登録し、「比較」することも大切です。対応の差がよくわかります。
■ 面談時に確認すべき3つのポイント
エージェントとの初回面談時には、以下の3点を必ず確認しましょう。
1. 紹介企業との関係性
「この企業とは長く取引していますか?紹介実績はありますか?」と聞くことで、エージェントがどれだけ企業の内情を把握しているかが分かります。
2. 求人情報の入手経路
自社経由の独自求人か、大手サイトの転載かで、情報の精度や信頼性に差が出ます。
3. 内定後のフォロー体制
内定が出たあとも相談に乗ってくれるか、入社後のサポートがあるかなど、長期的な視点で動いてくれるかが重要です。
■ 書面で確認すべきことリスト
口頭だけのやり取りでは、トラブルのもとになります。書面やメールで以下の内容を確認・保存しておきましょう。
確認項目 | なぜ重要か | チェック方法 |
---|---|---|
求人票の記載内容(年収・勤務地・業務内容など) | 後から「聞いていた話と違う」を防ぐため | メールでPDFなどをもらう |
労働条件通知書(内定後に企業から発行) | 雇用契約のベースとなる重要書類 | 内容をよく読み、合意する前に確認 |
エージェントとのやり取り履歴 | トラブル発生時の証拠になる | メール or メモで残す |
「言った・言わない」を防ぐためには、必ず記録を残すことがポイントです。
■ まとめ:信頼と確認がトラブル予防の鍵
信頼できるエージェントとの出会いは、転職成功のカギとなります。しかし、最終的に意思決定するのは自分自身。だからこそ、丁寧な情報収集と確認が何より大切です。
そうは言っても、どこが信頼できるか選ぶのが難しい!という場合、弊社提携先よりエージェントをご紹介できます。多数の転職エージェントが登録されており、最適なエージェントを見つけられます。
もしトラブルになったら?対処法ガイド

「聞いていた条件と違う」「エージェントの対応が不誠実だった」――実際にトラブルが起こったとき、どう対応すればよいのでしょうか?
感情的になる前に、冷静に証拠を集め、正しい手順で動くことが大切です。この章では、トラブル発生時にすぐやるべき行動から、第三者機関・法律専門家への相談方法までをわかりやすく解説します。
■ まずやるべき対応(証拠保全・担当変更など)
① 証拠を整理・保全する
トラブルが発生した場合、まずやるべきは「証拠の確保」です。後から言い分が食い違った際に、客観的な記録があるかどうかが極めて重要です。
保存すべきものの例
- エージェントとのメールやLINEの履歴
- 求人票や労働条件に関する文書(PDF・紙)
- 電話や面談内容のメモ、可能であれば録音
- 退職や内定取り消しに関する通知文など
証拠がない場合、主張が通りにくくなるので、やり取りはなるべく「記録に残る形」にしておきましょう。
② 担当エージェントの変更を申し出る
「この担当者とは信頼関係が築けない」と感じたら、遠慮せず変更を申し出ましょう。大手の転職エージェント会社であれば、複数のキャリアアドバイザーが在籍しており、担当の切り替えはよくあることです。
【伝え方の例】
「申し訳ありませんが、今後のやり取りについて別の担当の方と進めたいと考えています。ご対応いただけますか?」
■ 労働基準監督署や専門機関への相談
転職エージェントに関する問題は、就職・労働に関わる公的機関でも相談可能です。次のような組織が力になってくれます。
● ハローワーク(公共職業安定所)
職業紹介事業の監督官庁。違反が疑われる場合、調査・指導が行われることがあります。
● 厚生労働省・都道府県労働局
民間職業紹介事業の運営についての相談窓口があり、悪質なケースは行政指導が入ることも。
● 国民生活センター(消費者ホットライン)
転職支援サービスの契約トラブルなど、幅広い生活トラブルを受け付けています。
こうした機関に相談することで、個人では難しい交渉や調査が進む可能性があります。
■ 弁護士に相談すべきケースとは?
以下のようなケースでは、法的な視点での判断が必要になるため、弁護士への相談を検討しましょう。
✔ 内定取り消しで金銭的・生活的な損害が発生した
→「退職済で生活費がない」など、損害が深刻な場合は法的措置で補償を求めることができます。
✔ 明らかな虚偽情報で転職を決めさせられた
→「労働条件の虚偽説明」があった場合は、民法上の不法行為や債務不履行が問える可能性があります。
✔ エージェント側が連絡を無視、対応を拒否している
→ 専門家を通すことで交渉のテーブルに戻せることもあります。
法律相談は、初回無料の窓口を設けている弁護士事務所も多く、気軽に問い合わせることができます。
■ 「泣き寝入りしない」ことも大切な選択肢
トラブルは誰にでも起こり得ます。大切なのは、一人で抱え込まず、適切な手段で対処することです。
証拠を残し、冷静に対応し、必要なら専門家の力を借りる。そうすることで、再発防止にもつながり、自分のキャリアを守ることができます。
次章では、こうしたトラブルを恐れすぎず、前向きに転職を進めるための心構えと、若手がエージェントをうまく活用するコツについてお伝えします。
転職は慎重に、でも前向きに
トラブルを恐れすぎず「自分軸」を持つこと

若手にとってエージェントをうまく活用するコツ
ここまで、転職エージェントとのトラブル事例や損害賠償の可能性、注意点について解説してきました。「転職って怖いな……」と感じた方もいるかもしれません。
ですが、転職はネガティブなものではなく、自分の可能性を広げるチャンスです。大切なのは、正しい知識と冷静な判断力を持ち、自分に合った選択ができるようになることです。
■ 「自分軸」があれば、振り回されない
転職活動で迷いや不安が生まれるのは、「軸がないまま決めようとする」ことが大きな原因です。
例えばこんなこと、ありませんか?
- エージェントにすすめられたから応募した
- なんとなく年収が高いほうに流された
- 「今辞めないと損」と焦って決断した
こうした動機で動くと、結果的に「思っていたのと違った」と後悔しやすくなります。
だからこそ必要なのが、自分なりの「転職の軸」です。
✅ 自分軸の例
- どんな働き方をしたいか(リモート・フル出社など)
- どんなスキルを身につけたいか
- 働きやすいと感じる社風は?
- プライベートとのバランスをどう取りたいか
この「自分軸」がしっかりしていれば、エージェントの提案にも振り回されず、自信を持って意思決定ができます。
■ 若手がエージェントをうまく活用する3つのコツ
転職エージェントは、うまく使えば非常に心強いパートナーです。特に20代〜30代前半の若手にとって、以下のポイントを意識することで、より良い転職活動ができます。
1. エージェントは「情報源」として使う
エージェントの価値は、求人紹介だけではありません。企業の裏事情、業界の動き、採用の裏ルールなど、「ネットに出てこないリアルな情報」を得るために活用しましょう。
2. 主導権はあくまで自分が持つ
エージェントの提案は「選択肢のひとつ」として受け取りましょう。「言われたから応募」ではなく、「自分で考えて納得したから応募する」姿勢が大切です。
3. 複数のエージェントを比較し、相性を見極める
担当者にも得意分野や相性があります。一人に依存せず、2〜3社登録して比較検討することで、より客観的に判断できます。
■ 最後に:転職は「キャリアの通過点」
転職はゴールではなく、自分らしい働き方や生き方を見つけるための手段です。
トラブルを過度に恐れる必要はありません。正しい知識を持って、冷静に対応できる準備をしておけば、必要以上に不安になることなく、前向きに動けます。
あなたの可能性を信じて、自分のキャリアを主体的に描いていきましょう。